ニキビの治療 いまむかし

ニキビって、昔は「病気」という感覚がなかったですね。シミやシワみたく美容上の悩みと思われていました。
そんな昔の話 いまから15年くらい前のことです。

年のころは二十代でしょうか、独力では歩けない程に衰弱した様子の女性が来店されました。
付き添っているのは母親かしら?

薬局に来店されるのは、病院・医院を受診したり市販薬をお求めになる方ですから
体調が悪かったり介助を必要とされるのは、不思議ではありません。
でもこの方、身体というよりは精神的に参ってらっしゃるような印象を受けたんです。

当時勤務していた薬局は総合病院の近くにあり、若い女性が来店されるとその大半は産婦人科受診の方でした。
その中には、新しい命に出会う望み叶わず、悲しみに暮れるご様子の方もおられて
おかけする言葉を捜すも見つからず「おだいじに」の一言に万感の思いを込めるしかない。そんな経験もあったので
この方も、もしかして?と緊張しつつ処方箋を受け取ると…

受診されたのは皮膚科ね。

処方されているのは、ニキビの治療薬かしら?

併用薬や持病の有無などを伺ったところ
ニキビの他は持病もなく妊娠・授乳もなし。想定した最悪の事態ではないことに内心ホッと胸をなでおろし、緊張の糸が緩んだ…の、ですが
次の瞬間、ストールで隠れていたお顔がチラッと見えて
それが今にも泣きそうな、思いつめた表情だったので
ハッとさせられました。

ニキビ顔を見られたくなかった…人に見られることに耐えられなかったのでしょう、
その女性は、首と顔の大半を覆うように巻いているストールを、店内でも外すことはありませんでした。

昔は「青春のシンボル」とか言われていた

この女性のニキビ、今の感覚ではひどい状態でしたが
当時はこの程度、街中でもよく見かけました。
とくに男の子の場合、ニキビを気にすること自体「男らしくない、女々しい」とバカにされたり
青春のシンボルとか言われて放置されるのが普通でした。
特徴あるニキビ跡から「ゴジラ」という愛称の超有名野球選手もいましたね。

でも今は、ニキビの治療薬があります

現在、ニキビは病院・医院で治療できることが世間にかなり知られてきました。
たしかにほとんどの人にとっては、ニキビは思春期の一過性のもの。そのうち治ります。
でも跡が残ると美容上の悩みが一生続いたり
上記した患者さんのように精神的ダメージを被って
たとえば不登校などの引き籠りや、容貌コンプレックスをこじらせて人生の方向性を失う、そんな心配もありますから
”たかがニキビ”とは侮れません。

ニキビのせいで心病むことのないよう、治療してほしいです!

予防が大切!

ニキビ治療が広く知られたのは喜ばしいのですが
新たな懸念も出てきています。

その一つは、治療薬に頼り過ぎること。
”ひどくなったら薬でなんとかなる”とばかり
日ごろの予防策を怠ったり、悪化するまで放置する。これははよくありません。
予防が大切。治療は早期に始めましょう。

ニキビの予防にいちばんたいせつなのは、皮膚の清潔を保つことです。洗顔をこまめにしましょう。
ただし!洗いすぎも良くないんですね。一日1~2回の洗顔をしましょう。
(洗顔の頻度は皮膚の状態により違ってきます。お医者さんに診てもらって指示を仰いでください。)
洗顔後のスキンケアも大切です。皮膚の状態によっては、なにも塗らなくていい場合もありますが、保護剤を塗る必要があることが多いです。
保護剤というのは、ワセリンとかヒルドイド あるいは市販の化粧水・クリームでも
肌に合っていればOK。
肌に合わないのは逆効果ですから、宣伝文句やネット情報を鵜呑みにしないこと
また 友人からおすすめされたものでも、それが自分に合うとは限りません。
ご自身の皮膚の様子をよく観察して、選んでください。

あと注意したいのは、手で顔を触るのは極力避けること。
手って意外と汚いんです。

ニキビは、直ぐには治らない

そしてもう一つ知ってほしいのは
治療を開始しても直ぐには治らない
ということです。
たまにいらっしゃるそうです、「来週の結婚式までにキレイに直したい」と要望される患者さん。
気持ちはすごくわかるんです。でも残念ながらそれは無理です。
美容に詳しい方はご存知のことでしょう、皮膚のターンオーバーは30日周期です。
つまり、今の皮膚が新しい皮膚に置き換わるのに1か月かかりますし、その周期を数回繰り返すことでニキビが治るのだから
結婚式などのゴールから、できれば半年前に遡って治療を始めたいもの。

そして これもニキビ治療に限らずどんな薬でもそうですが
薬は使い方を間違えると副作用が出る危険があります。
正しい使い方を守りましょう。

予防のための施術もあります

ニキビ治療に使うのは薬だけでなく、レーザーなどの特殊な光線をあてる方法もあります。
私の住む町の皮膚科クリニックさんにも、この治療用の光線をあてる”マシン”があって
その皮膚科医さん曰く、いちばん良いニキビ治療は
ニキビ症状が出る前に、マシンを使った皮膚のメンテナンス(お手入れ)をすること
だそうです。

ただしこの場合は保険適応にはなりません。つまり全額個人負担だから
支払額は、病気治療の場合の3倍(健康保険の負担割合が三割の場合)か、それ以上となります。
また、このような”自由診療”は、クリニックが独自に料金を設定できるので
同じ施術でもクリニックによって料金がちがってきます。
高額だから優れているとも限りません。信頼できるクリニックを選んで、後悔の無い施術を受けてくださいね。

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